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KANSEN JOURNAL No.100

(転送は歓迎します。内容の無断転載は禁止します)

ベトナム熱帯感染症研修

  • 国立国際医療研究センター
    守山祐樹

ベトナム熱帯感染症研修は、ベトナムのベトナム国ホーチミン市熱帯病院(図1)で熱帯病の研修ができるコースです。COVID-19の影響で2020年以降中断していましたが、2023年度は再開予定です。

図1 研修先のベトナム国ホーチミン市熱帯病院(Hospital for Tropical Diseases:HTD, Ho Chi Minh City, Vietnam) 感染症に特化した病院で、かなり遠方からも患者が搬送されるとのことでした

例年、10~11月ごろに1週間程度、ベトナムのホーチミンに渡航します。ここでは、私が参加した2018年のスケジュールをお示しします。

日曜日 東京発ホーチミン着 夜にホテル(図2)でオリエンテーション
月曜日 臨床研修 外来・病棟 講義
火曜日 臨床研修 外来・病棟 講義
水曜日 臨床研修 ラボ見学 中間発表
木曜日 臨床研修 外来・病棟 講義
金曜日 臨床研修 外来・病棟 最終発表 ホーチミン→日本(深夜発フライト)
土曜日 朝 日本帰国

図2 宿泊したホテル なぜかツインでしたが、1人1部屋です。せっかくなので(?)日ごとに寝るベッドを変えていました

私がベトナムに渡ったのは11月上旬でしたが、現地はかなり暖かく半袖で過ごしました。フライトは約6時間、現地との時差は2時間です。

臨床研修では、ICU(成人・小児)、マラリア病棟、脳炎ユニット、結核病棟、HIVユニットなど多岐にわたる病棟を見学します(図3)。現地のドクターが親切にいろいろな症例の説明をしてくださいました。

図3 一般病床 病床が足りないので廊下にベッドを出して寝ている患者も

私はデング熱(デングショック)(図4)、侵襲性髄膜炎菌感染症、日本脳炎、新生児の麻疹、破傷風、Streptococcus suisによる細菌性髄膜炎、HIV、マラリア(図5)、結核、クリプトコッカス髄膜炎などの症例に触れさせていただきました。日本ではまれな疾患も多く、勉強になりました。S.suisの髄膜炎は日本ではまれな感染症ですが、ベトナムでは食習慣の違い(S.suisは非加熱の豚から感染する)によって髄膜炎の起炎菌としては最多とのことで、文化の違いが感染症にも影響を与えている点が興味深かったです。

図4 ICU病棟でデング熱の患者にエコーを当てるシーン 
図5 マラリアのラボでの実習 塗抹標本の作成や鏡検の実習を行いました

レクチャーでは、マラリア、腸チフス、デング熱、破傷風、メリオイドーシスなどに関する講義を受けました。また、ベトナムの医療事情や耐性菌の状況などについてもお話を聞くことができました。

最終日にはベトナム滞在中に学んだ症例のプレゼンテーションをして修了(図6)です! 同行しているスタッフのサポートもあります。

図6 修了証受領のシーン  写真左が院長のNguyen先生、写真右のシャツの襟が乱れている人が筆者

本研修は、日本ではなかなか診ることのできない疾患を経験できるよい機会なので、かなりお勧めです。同行する日本人スタッフや現地の医師もサポートしてくれます。2023年度の募集はまだ開始されていませんが、開始次第IDATENなどでご案内するので、しばらくお待ちください。

注意事項として、私が参加したときは、参加条件の一つとして「すでに熱帯感染症の基礎について基本的な学習を終えていること」が求められていました。それをクリアしていることの具体例として、
(1)過去に当院の「輸入感染症講習会」を修了していること
(2)国内外の感染症研修プログラムで学んでいること
が挙げられていました。2023年度はどうなるか不明ですが、これについては事前の準備が必要となるので、ご参加を希望される方はお早めに準備されたほうがよいと思います。