No. 1022023. 09. 27
成人 > その他

HIVスクリーニング検査と偽陽性

  • 国立がん研究センター東病院 感染症科
  • 東京医科大学八王子医療センター感染症科
  • 相野田 祐介
  • はじめに

    皆さんはHIV検査の「ウェスタンブロット法」という言葉を覚えていますか?
    ご存じの方も多いと思いますが、実はすでにHIV感染症の確認のためのウェスタンブロット法を用いた検査は、多くの施設でイムノクロマト(IC)法を原理とするHIV-1/2抗体確認検査法に切り替わっています。現在では、HIVスクリーニング陽性の場合、HIV-1/2抗体確認検査法とHIV-1核酸増幅検査法を組み合わせて確認していくことが推奨されているので1)、今回は、これらの検査について少しお話ししたいと思います。

    診断ガイドラインのフロー

    従来のウェスタンブロット法は、感度に限界があるため、結果解釈に難渋するケースもありました。2018年6月にIC法を原理とするHIV-1/2抗体確認検査法が日本国内で承認され、2020年に日本エイズ学会・日本臨床検査医学会から「診療におけるHIV-1/2感染症の診断ガイドライン2020版」が発行されています1)2)

    このガイドラインにあるフローに沿って、HIVスクリーニング検査が陽性だった場合、HIV-1/2抗体確認検査〔GeeniusTM HIV=1/2 Confirmatory Assay(Bio-Rad Co.,Ltd)など〕とHIV-1核酸増幅検査を行ない、その後に結果を判定していくことになります。(いくつかあるHIVスクリーニング検査の中にもIC法があるので混同しないように注意してください。)

    結果の解釈については、その都度最新のガイドラインを参照してください。(HIVにはHIV-1とHIV-2の2つのタイプがあり、現時点では日本国内での報告のほとんどがHIV-1になります。HIV-2核酸増幅検査法については、専門機関への相談が必要ですのでここでは割愛します。)確認検査が外注検査となっている施設でも、検査会社ではすでに確認検査法をウェスタンブロット法からHIV-1/2抗体確認検査法に切り替えているところもあると思いますので、もしまだご自身の施設で切り替わっていることが把握できていない場合には、それぞれ検査会社に確認してください。

    また、このガイドラインにある通り、単回では判定保留になるケースもあるため、場合によっては後日再検査が必要になることもあります1)

    HIVスクリーニング検査の偽陽性

    HIVスクリーニング検査は、現在の第4世代の検査では感度・特異度いずれも99%以上と極めて高く、数値だけ見ればかなり優秀な検査法となります3)

    もちろん、HIV感染からスクリーニング検査が陽性になるまでの期間(ウインドウピリオド)は、現在よく使用されている第4世代のHIVスクリーニング検査でも約13〜42日程度あるとされており、HIVスクリーニング陰性でも感染のリスクがある場合や急性感染期を疑う場合には、後日適切な時期に再度検査を行う必要があるとされています1)

    一方で、HIVスクリーニング検査が陽性だったけれども、その後の確認検査の結果で最終的に陰性という判断となることもあります。このHIVスクリーニング検査の偽陽性は、どこでも起こり得るので、例えば「HIV拠点病院ではないから自院にはHIV陽性者は来ない」と高を括っていると、HIVスクリーニング検査が陽性になり慌てるということもあります。

    そうならないように、あらかじめどのようなフローで確認検査を行うか、日ごろから施設内のシステムを定期的に確認しておく必要があります。

    HIVスクリーニング検査が偽陽性となる原因

    HIVスクリーニング検査の偽陽性については、今までに多くの原因が報告されています。今の第4世代の検査法でも、例えば妊娠であったり、膠原病であったり、一部の感染症であったり、その他様々な状況で偽陽性になりやすいとの報告があります4)。中にはマラリアでのHIVスクリーニング検査偽陽性なんていう報告もあります5)6)

    最近ではCOVID-19の原因であるSARS-CoV-2によるHIVスクリーニング検査偽陽性も報告されています。現在広く使われている第4世代HIVスクリーニング検査法は抗体と抗原の一部の両方を測定しており、一般的には抗体の交差反応が思い浮かびそうですが、このSARS-CoV-2はウイルス抗原の一部とHIV抗原の一部の交差性によって、HIVスクリーニング検査が偽陽性となる可能性が指摘されています7)。また逆に急性HIV感染症におけるCOVID-19迅速抗原検査偽陽性も報告されており、もはや何でもありの状況です8)

    おわりに

    検査はあくまで検査であり、どのように優れた検査であっても、その前と後を適切に評価していくことが医療者には求められているのだろうと思います。今回は検査前後の話の仕方や、同意取得の話などは割愛し、あくまで純粋に検査のところだけお話ししました。もっと知りたい方は、成書・参考文献などをご参照ください。


    【References】

    1. 診療におけるHIV-1/2感染症の診断ガイドライン2020版(日本エイズ学会・日本臨床検査医学会 標準推奨法), 2020.
      https://jaids.jp/wpsystem/wp-content/uploads/2021/01/guideline2020.pdf
    2. 河上麻美代, 北村有里恵, 伊藤 仁・他: 東京都のHIV検査におけるHIV-1陽性例を用いたHIV-1/2抗体確認検査法の有用性の検討. IASR. 2022 Oct; 43: 226-7.
      https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2570-related-articles/related-articles-512/11561-512r03.html
    3. Chavez P, Wesolowski L, Patel P, Delaney K, Owen SM. Evaluation of the performance of the Abbott ARCHITECT HIV Ag/Ab Combo Assay. J Clin Virol 2011;52(SUPPL.1) S51–5
    4. Alexander TS. Human Immunodeficiency Virus Diagnostic Testing: 30 Years of Evolution. Clin Vaccine Immunol. 2016; 23: 249-53.
    5. Stempel JM, Mora Carpio AL, Puga D, Perloff S. False positive fourth generation HIV test in a patient with severe malaria. Int J Infect Dis. 2019; 83: 86-87.
    6. Ainoda Y,et al. False-positive fourth-generation HIV test result in a woman with Plasmodium malariae malaria. Trans R Soc Trop Med Hyg. 2023; 117:147-148.
    7. Gudipati S, et al. Increase in False Positive Fourth Generation HIV Tests in Patients with COVID-19 Disease. Clin Infect Dis. 2023: ciad264.
    8. Yamaniha K, et al. False-positive for SARS-CoV-2 antigen test in a man with acute HIV infection. J Infect Chemother 2021; 27:1112–4
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