No. 102009. 06. 01
成人 > その他

第21回日本性感染症学会 特別公開講座「内科医のためのSTI診療のコツ」 (1/4)

静岡県立静岡がんセンター 感染症科

冲中 敬二

(4分割配信の1回目です)


 KANSENJOURNALの読者の皆様は、「性感染症 Sexually transmitted infection(STI)」の系統的な学習をされたことがおありでしょうか? 「STIって性器に病変が出るはずだから、自分には関係ない」と思ってらっしゃいませんか?

 例えば激しい咽頭痛と発熱を訴えて受診した患者さんがいたとします。咽頭炎の鑑別にはもちろんウイルス性やA群β溶連菌がありますが、そのなかには淋菌やクラミジアによる咽頭炎が隠れています。全身のリンパ節が腫れていたらEBウイルスやサイトメガロウイルスによる伝染性単核球症症候群をお考えになるかもしれませんが、その原因はHIV初感染や二期梅毒かもしれません。実は、多くのSTIの患者さんは、一般内科外来をまず受診しているかもしれない、そうだとすれば、内科医にとってSTIの診療に通じておくのは必須といえるでしょう。こういったコンセプトのもと、2008年12月7日に、第21回日本性感染症学会の特別公開講座として「内科医のためのSTI診療のコツ」が開催されました。今回のメルマガではその様子をレポートしたいと思います(特別公開講座パンフレットはこちら)。

 まず最初に、イントロダクションとして、国立感染症研究所の堀成美先生からSTIサーベイランスの重要性、ひいては「医師からの報告の重要性」についてご説明がありました。サーベイランスによってアウトブレイクに対して速やかに対応ができるのはもちろんのこと、様々な政策立案においてもサーベイランス結果がその根拠となることがあります。感染症法で規定されている全数報告疾患にはHIV/AIDS、梅毒、結核、ウイルス性肝炎やアメーバ赤痢などがあり、また定点報告疾患としては性器クラミジアや淋菌、性器ヘルペス、尖圭コンジローマなどがあります(スライド1.詳しくは国立感染症研究所ホームページを参照 http://idsc.nih.go.jp/surveillance.html)。また、正確に診断できていても「報告の必要性を知らなかった」ということは多々あるのではないでしょうか。上記をチェックして報告漏れのないように気をつけたいものです(スライド2)。


スライド1 (堀成美,2008)


スライド2(堀成美,2008)

 さて、次回は神戸大学の岩田健太郎先生のご発表から「内科医の診療に必要なSTIの知識とスキル」についてご紹介します。

(つづく)

記事一覧
最新記事
成人 > その他
No. 1022023. 09. 27
  • 国立がん研究センター東病院 感染症科
  • 東京医科大学八王子医療センター感染症科
  • 相野田 祐介
  • はじめに 皆さんはHIV検査の「ウェスタンブロット法」という言葉を覚えていますか? ご存じの方も多いと思いますが、実はすでにHIV感染症の確認のためのウェスタンブロット法を用いた検査は、多くの施設でイムノクロマト(IC)法を原理とするHIV-1/2抗体確認検査法に切り替わっていま…続きを読む

    成人 > その他
    No. 952022. 06. 15
  • 北海道がんセンター 感染症内科
  • 藤田 崇宏

    はじめに――趣味は論文集め 論文の収集が好きである。専門家としてガイドラインや教科書に載る前のcutting edgeの部分に追い付いていく必要もあるし、時に面白い視点で自分の診療を変えてくれるような論文に出合うのも楽しいものである。また、COVID-19のパンデミックに対応する…続きを読む

    感染症科外来での雑感
    成人 > その他
    No. 942022. 05. 30
  • 日本赤十字社医療センター 感染症科
  • 上田 晃弘
    感染症科外来での雑感

    新型コロナウイルス感染症が流行する数年前のことだが、便に寄生虫の卵が出ているらしいという患者さんをご紹介いただいた。感染症科の外来をしていると、こうした患者さんも時々お見えになる。私は寄生虫症の専門家ではないが、寄生虫に詳しい技師さんに協力してもらって対応している。実際、患者さん…続きを読む