右下肺野に浸潤影が認められた70代女性(1/3)
(3分割配信の1回目です)
※本症例は、いくつかの症例を総合して作成した架空の症例です。
症例は70代の女性。
主訴は下痢。季節は10月~11月にかけて。
3か月前、中咽頭癌の治療のために咽頭部分切除術が行われている。術後から慢性の誤嚥を指摘されていた。2週間前から抗癌剤(S-1)の内服をしている。主科で行われた定期フォローの頸部~胸腹部の造影CTにて、右の下肺野に浸潤影を指摘されたため、感染症科に紹介となった。
感染症科での病歴聴取では、明らかな誤嚥のエピソードは本人は気づいていないものの、ふだんからむせこみは多く、4週間前からは、むせこみ以外に咳・痰の増加、痰の性状の白色から黄色への変化、軽度の悪臭に気づいているとのことであった。体重減少はなかったが、軽度の寝汗があった。
感染症科では、画像所見と病歴から、慢性的な誤嚥に続発した肺膿瘍と診断し、アモキシシリン・クラブラン酸1回750mg 1日3回の内服を処方した。患者は1週間後の外来を予約して帰宅した。
内服開始の翌日から、1日10回近い水様の下痢が出現した。受診から2日後に、感染症科の外来に「多量軟便が出現した」と電話連絡があっため、いったんアモキシシリン・クラブラン酸の内服を中止するよう指示した。
3日目に、内服を中止しても水様便が続き、食事摂取が困難な状態となったため、感染症科の外来を受診した。
既往歴
結核の既往歴はない。家族の結核発症者の存在も明らかではなかった
耐糖能異常が指摘された既往歴もない
10年前に胃がんの手術を受けている
社会歴
夫と2人暮らし、住宅街に住んでいる
ペット飼育なし
Sick contactなし
飲酒、喫煙しない
身体所見
BP108/68、HR90(臥位)、BT36.8℃、 RR16
ややぐったりはしているが、意識清明
結膜:眼瞼結膜蒼白なし、充血なし、眼球結膜の黄染なし
副鼻腔の圧痛なし
口腔内:粘膜炎は明らかではない
頸部:リンパ節腫脹なし
胸部:ラ音なし、心音異常なし、心雑音なし
腹部:軟、圧痛なし
背部:CVA叩打痛なし、脊柱の叩打痛なし
四肢:浮腫なし
:::::::::::::::::::::::::::::::::
さて、診断のためにどのような病歴や追加情報が必要でしょうか?
初期評価のために何をしますか?
:::::::::::::::::::::::::::::::::
(つづく)