No. 52008. 11. 03
成人 > ケーススタディ

不明熱の原因検索のために来院した56歳男性 (1/3)

亀田総合病院

山本 舜悟 

(※今号のケーススタディは、3回連載で配信します。)


 季節は夏、場所は房総半島。

 もともと慢性痒疹で他院の皮膚科にかかっていたバスの運転手をしている56歳男性が、不明熱の原因検索で外来に紹介されてきた。

 詳しい経過を聞くと以下のとおりだった。

 1か月ほど前に、バスで酔っぱらいの客にからまれて殴られて、腰を蹴飛ばされた。持病に腰椎椎間板ヘルニアがあり、以後、腰痛が悪化していた。
 もともとあった慢性痒疹については、外用薬のみ(詳細不明)の処方だった。
 3週間前にかゆみが強くなり、ひっかき傷のところが発赤したので、エピナスチン(アレジオン)とミノサイクリンを処方された。2週間前に腰痛に対して、近医の整形外科でロキソプロフェン(ロキソニン)、レバミピド(ムコスタ)、メコバラミン(メチコバール)を処方された。10日前に全身の紅斑が出現し、再度皮膚科を受診したところ、薬疹を疑われ、ロキソプロフェン、ミノサイクリン、メコバラミンが中止になり、アセトアミノフェンを処方された。1週間ほど前から発熱するようになった。それ以前は熱を測っていなかったので、それより前からあったかもしれないという。この頃には皮疹は少しよくなっていた。原因不明ということで紹介されてきた。
 発熱に関しては、午前中は37℃台だが、夕方になると38℃台になる。この時、寒気や悪寒は伴わない。熱が上がると食欲はなくなるが、アセトアミノフェンを飲んで熱が下がっている時はそれなりに食事をとれる。
 発熱時に頭痛が少しある。
 鼻汁、咽頭痛はなし。咳や痰、呼吸困難もなし。胸痛なし。腹痛、吐き気、下痢なし。関節痛なし。

 現在、労災ということで、仕事は休業中である。家族は妻と2人暮らし。
 海外旅行には行ったことはないが、バスの客として外国人を乗せることは多い。他には入院歴はなく、これまで手術歴もない。輸血歴もない。

既往歴:慢性痒疹以外はなし
検診歴:特に定期的には受けてない
内服薬:エピナスチン、アセトアミノフェン、レバミピド
シックコンタクト:周りで発熱している人はなし。周囲で結核や肋膜炎と言われた人も聞いたことがない
動物は飼っていない
飲酒:普段はビール350mlを1日1本くらい。熱がでるようになってからは飲んでいない
喫煙は40年前から1日30本くらい
身長170cm 体重73kg(この3週間で2kg減少した)
性交渉歴:パートナーは妻のみ。この3か月間は性交渉なし
身体所見:
BP142/90mmHg、HR88回/分整、BT38.8℃、RR12回/分
意識清明
結膜:眼瞼結膜蒼白なし、充血なし、眼球結膜の黄染なし
副鼻腔の圧痛なし
咽頭:発赤なし、扁桃腫大なし
口腔内:う歯なし、Koplik 斑なし
頸部:甲状腺腫大なし
胸部:ラ音なし、心音異常なし、心雑音なし
腹部:軟、圧痛なし
   肝縦径は鎖骨中線上で10cmくらい、
   トラウベ三角は鼓音、肝臓・脾臓の叩打痛なし
背部:CVA叩打痛なし、脊柱の叩打痛なし
四肢:浮腫なし
直腸診:前立腺圧痛なし
    関節の腫脹、熱感、発赤なし
リンパ節:頸部、腋窩、滑車、鼠径リンパ節の有意な腫脹なし
皮膚:体幹部に径1~2mmの紅斑が散在する。融合傾向はなし

両側上肢にかゆみを伴う小丘疹が散在する(これは以前からという)

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Q.さて、ここまでの病歴、診察所見で、
どのような鑑別診断を挙げ、どのように検索を行っていきますか?

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(本症例は実際にあった症例を元に、個人情報などに配慮しつつ、再構成したものです。)

(次回に続きます)

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