No. 532014. 12. 31
その他 >

2014年まとめ

奈良県立医科大学感染症センター

笠原 敬

国内外でのエボラ関連ニュースの過熱感がようやく落ち着いたかと思われた年末の12月28日、シエラレオネから帰国した男性が発熱し、エボラウイルス感染症が疑われているというニュースが飛び込んできました。

2002年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生してから、毎年のように様々な感染症がニュースで取り上げられるようになった印象があります。2014年は8月に69年ぶりのデング熱の国内感染例の報道がありました。時同じくしてエボラウイルス感染症関連の諸問題が持ち上がり、年末年始も慌ただしくしている医療機関や行政機関も少なくないでしょう。そうこうしているうちに、インフルエンザは通年より早い流行入りをし、RSウイルス感染症も大流行しています。世界ではMERS(中東呼吸器症候群)や鳥インフルエンザ(H5N1およびH7N9など)の症例が引き続き報告されています。渡航歴や接触歴などの病歴聴取や標準予防策などの基本的な感染対策の重要性が改めて見直されています。

ウイルス感染症だけではありません。薬剤耐性菌、とりわけ大腸菌などの腸内細菌科における薬剤耐性はいよいよわが国でも無視できない状況になりつつあり、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症が5類感染症に指定されました。届出開始が2014年9月19日からであったにもかかわらず、2014年12月14日時点ですでに254例が届けられているようです。

2014年のKansen Journalではケーススタディーを3題、ミニレビューを2題取り上げました。またエボラウイルス感染症の現状と対策に関する臨時号を2報出しました。それぞれに重要なtake home messageがありますので、読み過ごしたという方は、今一度、下記からご確認をお願いします。
それでは皆様、2015年のKansen Journalにもご期待ください!

表 2014年発行のKansen Journalの記事一覧

3月

東北大学病院検査部 大江千紘
東北大学大学院医学系研究科感染症診療地域連携講座 具 芳明
【ケーススタディ】発熱・嘔吐を主訴に来院した重篤な既往歴のない60歳代女性(Listeria monocytogenesによる市中細菌性髄膜炎)
その1その2その3

4月

日本赤十字社和歌山医療センター感染症内科 大棟浩平、古宮伸洋
【ケーススタディ】発熱・発疹を訴えERを受診した50歳代男性(日本紅斑熱)
その1その2その3

5月

東京都立墨東病院感染症科 彦根麻由
東京女子医科大学感染症科・東京都立墨東病院救急診療科(東京ER墨東) 相野田祐介
【ミニレビュー】レプトスピラ症―渡航歴がなくても都市部でも起こりうる感染症
その1その2その3

7月
8月

東海大学医学部総合内科 上田晃弘
【ケーススタディ】右側腹部痛を主訴に受診した若年女性
その1その2その3

9月

京都大学大学院社会健康医学専攻医療疫学分野/神戸大学感染症内科 山本舜悟
【ミニレビュー】感染症医のための非劣性試験の読み方
その1その2その3

10月
11月

奈良県立医科大学感染症センター 笠原 敬
【臨時号】エボラウイルス感染症の現状と対策
その1その2

注:執筆者の所属は執筆時点のものです。

(了)

記事一覧
最新記事
その他 >
No. 1042024. 04. 01
  • 京都大学医学部附属病院検査部・感染制御部
  • 京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学
  • 篠原 浩
  • この投稿はパスワードで保護されているため抜粋文はありません。

    2023年米国感染症学会総会(IDWeek 2023)参加報告
    その他 >
    No. 1032024. 02. 17
  • 聖路加国際病院感染症科
  • 石川和宏
  • テキサス大学MDアンダーソンがんセンター感染症科
  • 松尾貴公
    2023年米国感染症学会総会(IDWeek 2023)参加報告

    2023年10月11日から15日までボストンで開催されたIDWeek 2023は、対面式とバーチャル会議のハイブリッド形式が採られ、9500人以上の参加者を集めました(図1、2)。このIDWeekは感染症領域では世界最大の学会総会で、米国感染症学会(IDSA)、米国小児感染症学会…続きを読む

    成人 > その他
    No. 1022023. 09. 27
  • 国立がん研究センター東病院 感染症科
  • 東京医科大学八王子医療センター感染症科
  • 相野田 祐介
  • はじめに 皆さんはHIV検査の「ウェスタンブロット法」という言葉を覚えていますか? ご存じの方も多いと思いますが、実はすでにHIV感染症の確認のためのウェスタンブロット法を用いた検査は、多くの施設でイムノクロマト(IC)法を原理とするHIV-1/2抗体確認検査法に切り替わっていま…続きを読む

    ASM microbe 2023 体験記
    その他 >
    No. 1012023. 08. 15
  • 京都大学医学部附属病院検査部・感染制御部
  • 京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学
  • 篠原 浩
  • ASM microbe 2023 体験記

    今回、米国微生物学会(American Society of Microbiology;ASM)の学術講演会であるASM Microbeで現地発表する機会に恵まれましたので、情報を共有したいと思います。 1.ASM Microbeについて ASM Microbeは年1回開催され、…続きを読む

    ベトナム熱帯感染症研修
    その他 >
    No. 1002023. 01. 23
  • 国立国際医療研究センター
  • 守山祐樹
    ベトナム熱帯感染症研修

    ベトナム熱帯感染症研修は、ベトナムのベトナム国ホーチミン市熱帯病院(図1)で熱帯病の研修ができるコースです。COVID-19の影響で2020年以降中断していましたが、2023年度は再開予定です。 例年、10~11月ごろに1週間程度、ベトナムのホーチミンに渡航します。ここでは、私が…続きを読む

    「タイ・ミャンマー国境における現地で学ぶ熱帯感染症医師研修」の紹介
    その他 >
    No. 992022. 12. 17
  • 埼玉医科大学総合医療センター感染症科・感染制御科  Case Western Reserve University/Cleveland VA Medical Center
  • 小野大輔
    「タイ・ミャンマー国境における現地で学ぶ熱帯感染症医師研修」の紹介

    「タイ・ミャンマー国境における現地で学ぶ熱帯感染症医師研修」は、タイ王国のさまざまな地域・医療機関において、熱帯医学のみならず現地の医療体制、公衆衛生などについても直に学ぶことができる研修です。私も2015年度に参加させていただきましたが、大変有意義かつ楽しい2週間を送ることがで…続きを読む

    マヒドン大学熱帯医学短期研修
    その他 >
    No. 982022. 12. 05
  • 愛知県がんセンター感染症内科
  • 伊東 直哉
    マヒドン大学熱帯医学短期研修

    タイ王国マヒドン大学熱帯医学短期研修は、3日間で熱帯医学の基本を学べるコースです。医師(内科医、小児科医、総合診療医、感染症医)、看護師などを対象としています。2022年度は3年ぶりに短期研修が再開されます。COVID-19の影響を考え、医師・医学生を対象にオンライン研修と組み合…続きを読む

    手感染症――化膿性腱鞘炎を中心に
    成人 > ケーススタディ
    No. 972022. 08. 10
  • 東京大学医学部附属病院 感染症内科
  • 脇本 優司、岡本 耕
    手感染症――化膿性腱鞘炎を中心に

    はじめに 全身の中でも手指が最も外傷を負いやすいこともあり、手感染症(hand infection)は頻度の高い皮膚軟部組織感染症の一つである。手感染症は侵される解剖学的部位や病原体などによって分類されるが、中でも化膿性腱鞘炎は外科的緊急疾患であり、早期の治療介入が手指の機能予後…続きを読む

    小児 > レビュー
    No. 962022. 07. 15
  • あいち小児保健医療総合センター総合診療科
  • 小川 英輝

    はじめに 肺炎を診断したことがない、もしくはその患者の診療に携わったことがない医療者は、ほとんどいないだろう。日本では、年間およそ8~10万人が肺炎で死亡していると推計され、常に死因の上位に位置(死因の第4~5位で推移)している[1]。特に、高齢者医療に携わる方々にとって、肺炎は…続きを読む

    成人 > その他
    No. 952022. 06. 15
  • 北海道がんセンター 感染症内科
  • 藤田 崇宏

    はじめに――趣味は論文集め 論文の収集が好きである。専門家としてガイドラインや教科書に載る前のcutting edgeの部分に追い付いていく必要もあるし、時に面白い視点で自分の診療を変えてくれるような論文に出合うのも楽しいものである。また、COVID-19のパンデミックに対応する…続きを読む