KANSEN Journal No.50(2014.7.29)
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Case Study(1/3)

右側腹部痛を主訴に受診した若年女性


東海大学医学部総合内科
上田晃弘

 


 

(今号は3週連続で配信します。)
※実際にあったケースに基づく架空の症例です。

 

症 例

 20歳代女性


主 訴

 右側腹部痛


病 歴

 受診1週間ほど前から、心窩部右側から右側腹部にかけて痛みがある。痛みは徐々に強くなってきて、受診2日前ぐらいから寝付けないほど痛い。痛みは持続痛で、波はあるがなくなることはない。夜になるととても痛くなる。腹痛が出現した頃から便秘だったので市販の便秘薬を飲んだが、便が出ないので受診1日前に近医を受診した。処方された緩下剤を内服し便通を認めたが、痛みは続いている。


ROS(review of systems)

 自宅では熱は測っていないので発熱の有無は不明。悪寒戦慄なし。食欲はあまりない。咽頭痛なし。鼻汁なし。咳なし。痰なし。心窩部右側から右季肋部に痛みあり。下痢なし。もともと便秘気味で排便は2〜3日に1回程度。排尿時痛なし。残尿感なし。関節痛なし。


既往歴

 特になし


嗜好歴

 喫煙:20本/日×1年、飲酒:1日焼酎2杯ぐらい


薬剤歴

 常用薬なし、受診1日前から酸化マグネシウム


社会歴

 職業は飲食店勤務


曝露歴

 最近の海外旅行歴なし、sick contactなし


アレルギー歴

 特になし


家族歴

 特になし


現 症

・身長155cm、体重51kg、体温36.6℃、血圧100/60mmHg、脈拍82/分、呼吸数14/分
・全身状態:安定している
・意識:清明
・頭部:結膜に貧血、黄疸や出血斑を認めず、口腔内に白苔や咽頭発赤を認めず
・頸部:リンパ節腫大なし、項部硬直なし
・胸部:呼吸音;清、ラ音聴取せず。心音;整、III音やIV音を聴取せず、心雑音なし
・腹部:平坦、軟。心窩部右側から右季肋部にかけて圧痛あり、吸気時に増悪する。右下腹部、左側腹部、下腹部に圧痛なし
・背部:肋骨脊柱角叩打痛なし、脊柱叩打痛なし
・四肢:手指先端、足指先端に皮疹なし。手、肘、肩、足、膝、股関節に圧痛や熱感、腫脹なし


アセスメントとプラン

 特に基礎疾患のない若年女性の右季肋部痛で、身体所見上右季肋部に圧痛を認め、Murphy徴候が陽性である。肝胆道系の問題、特に胆嚢炎を疑う。肝膿瘍も鑑別に入る。検査計画としては、血算、肝胆道系酵素を含んだ生化学、血液培養2セット、腹部超音波検査を予定した。

 血液検査

・血算:WBC 8900/μL(Neut 81.0%、Lym 12.9%、Mono 4.2%、Eosino 1.6%、Baso 0.3%)、RBC 394万/μL、Hb 12.6g/dL、Hct 38.2%、Plt 41.7万/μL
・生化学:T-Bil 0.2mg/dL、AST 18U/L、ALT 23U/L、LDH 162U/L、ALP 213U/L、GGT 19U/L、Cr 0.59mg/dL、BUN 7mg/dL、Glu 102mg/dL、Na 143mEq/L、K 3.5mEq/L、Cl 105mEq/L、CRP 9.93mg/dL

 腹部超音波検査

 胆嚢壁の肥厚なし。総胆管の拡張なし。肝膿瘍を疑わせる所見を認めず。腹水を認めず。

 

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Q:この時点で想定すべき疾患として何を疑い、どのような検査計画を考えますか?

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(つづく)


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