No. 482014. 04. 18
成人 > ケーススタディ

発熱・発疹を訴えERを受診した50歳代男性(1/3)

日本赤十字社和歌山医療センター感染症内科

大棟 浩平、古宮 伸洋

(今号は、3週連続で配信します。)

症 例

主 訴

発熱、発疹

現病歴

2013年5月の和歌山にて。当院受診5日前より体幹を中心とした紅斑および39℃台の高熱が持続したため、近くの皮膚科医院を受診した。同院で風疹と言われ、解熱剤のみが投与され、しばらく自宅にて経過を見ていたが、まったく改善を認めなかったため、当院の夜間救急外来へ紹介された。周囲に同じような症状の人はいなかった。

既往歴

虫垂炎(20年前)、C型肝炎(10年前。以後、強力ネオミノファーゲンシー®を定期投与)。

家族歴

特記事項なし

薬剤歴

・常用薬:なし
・新しく飲み始めた薬:なし
・漢方・栄養補助食品使用:なし

アレルギー歴

エビ

生活歴

・飲 酒:機会飲酒
・喫 煙:20本×30年
・食 事:生肉を食べる機会は思い出せる範囲でなし
・性交渉:不特定の人との性交や性風俗の利用、同性との性交渉はなし

社会歴

・家 庭:妻と2人暮らし
・職 業:会社員
・動物接触歴:なし
・ワクチン接種歴:子どもの頃に接種したと思うが詳細は記憶になし
・外傷歴:なし
・輸血歴:なし

渡航歴

海外旅行、国内旅行なし。温泉などもここ最近は行っておらず。

review of systems

  • 陽性所見:肩周囲の筋肉痛、全身性の小紅斑
  • 陰性所見:悪寒戦慄、頭痛、めまい、視力低下、耳鳴り、鼻汁、鼻閉、歯肉出血、う歯、咽頭痛、胸痛、呼吸困難感、咳嗽、心窩部痛、嘔気・嘔吐、便秘、下痢、排尿障害

受診時身体所見(図)

  • 身長175cm、体重68kg
  • 体温38.3℃、HR 110回/分、BP 150/96mmHg、RR 28/分、SpO2 96%(room air)
  • 意 識:清明
  • 頭頸部:眼球結膜の充血・点状出血なし、眼瞼結膜の黄染なし、口腔内に白苔・潰瘍は見られず、咽頭発赤なし、粘膜疹なし、甲状腺腫大なし、項部硬直・jolt accentuationなし、表在リンパ節に腫脹なし
  • 胸 部:心音S1→S2→S3(-)→S4(-)、雑音なし、呼吸音清、副雑音なし
  • 腹 部:平坦・軟、圧痛なし、腸蠕動音正常、肝叩打痛なし、肝脾触知せず、手術瘢痕あり
  • 背 部:脊椎叩打痛なし、CVA叩打痛なし
  • 四 肢:浮腫なし
  • 皮 膚:体幹および手掌部の小紅斑
 胸腹部、背部、手掌部の所見

血液検査

[末梢血]
WBC 7600/μL、Neut 79%、Lymph 16.2%、Mono 4.7%、Baso 0.1%、Hb 14.0g/dL、Plt 8.5×104/μL
[血液生化学]
AST 9IU/L、ALT 94IU/L、LDH 288IU/L、ALP 175IU/L、γ-GTP 42IU/L、Cr 1.1mg/dL、BUN 21.0mg/dL、Na 137mEq/L、K 3.5mEq/L、Cl 103mEq/L、T-Bil 0.6mg/dL、CRP 14.41mg/dL

尿定性/尿沈渣

比重1.032、pH 6.0、糖(1+)、蛋白(1+)、潜血(1+)、ケトン(-)、Bil(1+)、Uro(2+)、亜硝酸塩(-)
RBC 1.2/HPF、WBC 11.4/HPF

胸部X線撮影

浸潤影なし

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Q:鑑別診断と必要な検査を挙げてください。

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(つづく)

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